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3回目の人工授精

2回の体外受精に失敗し、3回目となった。今回失敗したら次は体外受精だ。莫大な金がかかるし、今までと比べものにならないぐらい通院回数も増える。自己注射といって、自分で自分のおなかに注射を打ったりしないといけないらしい。怖すぎる。あいかわらず子供の欲しいモチベーションが中途半端な私は、これでだめだったら不妊治療やめるか、しばらく人工授精続けさせてもらえるといいなあと思っていた。
この周期はタイミングが悪かった。ちょうど排卵日前後に私の出張が重なる。「どうせだめだろうな」と思っていた。

また、(結果的に計画はなしになってしまうのだが、)出張の帰りにマイルを使ってニューヨークに寄って夫と落ち合い、旅行をしようという案が出ており、出張前の私は行ったことのないニューヨークについて調べるのに大忙しだった。ガイドブックを買いこんでクリニックの待ち時間に熟読し、行きたいところに蛍光ペンで印をつけ、Excelで予定表まで作った。その時の私は妊娠のことを考える余裕なんてなかった。
またその頃私は度重なる失敗に、若干クリニックを信用しなくなっていた。ネットで調べると、「体外受精の場合、精子体外受精後8時間しか生きられない」という情報があるのだが、私の通っていたクリニックでは、排卵予定日前日に人工授精を行っていた。「情報が古いのでは。。?」と思い始めていた。
そんなこともあり、今周期体外受精を決行する、という院長の判断に対して「ダメもとだろう」「体外受精やれば儲かるしな」と穿った考え方をしていた。
半信半疑な状態のまま言われるがままに体外受精を受け、指定された時刻にブセレキュアを鼻に噴射し、私は出張に向かった。ダメもとと思いこんでいるので、それまでしていた腹巻も、毎日飲んでいた温経湯も葉酸のサプリもビタミンEのサプリも、高温期の禁酒も、ぜーんぶサボった。出張中は毎日飲み会でたらふく酒を飲み、出張から帰った後も夫と行った肉フェスで昼間からビールを飲み、休日は自転車で遠出をしたり、久しぶりに何のストレスもない生活を送った。今回は捨てよう、そんな気分だった。

生理予定日前日、どうせできてないし、期待しないでとっとと結果を見て気分を切り替えよう、と早期妊娠検査薬(生理予定日の一週間前から試せる妊娠検査薬)を試した。やっぱり真っ白だよね、そりゃあね、…ええ!?いや、どうも赤紫色の線が見えるような気がする。10分待ってみた。時間がたてばたつほど線の色が濃くなり、終了線の半分ぐらいの、見間違いではないほどの濃さにまでなった。私は寝ていた夫を叩き起こし(この時まだ夜の10時ごろだったにも関わらず、夫はなぜか既に寝ていた)、「これ見て!線あるよね?」と詰め寄った。夫は寝ぼけながら「うん、あるんじゃない?」と言った。私がその後もしつこく騒ぎたてるので夫はムッとしながらも起きあがり、「線ある」とか「次また病院?」とかいろいろ言っていた。私は期待していたとはいえ突然のことに完璧にテンパり、「名前考えなきゃ!何にしよう」とノートを引っ張りだして候補を書き始めたり、「ほんとに産んでいいんだよね!?いい?産むよ?」と夫に何度も聞いたりして鬱陶しがられた。